介護職は、生産性がない仕事なのか? だから賃金が安いのか?

生産性が高い仕事というと、工業やサービス業に目を向き、医療や福祉、お役所仕事というと生産性が低いというイメージに目を向きがちです。

生産性がない仕事ほど、ムダが多く利益を生みにくいのは当然であるも、その仕事がなければ会社や世の中が回っていかないのもあります。

それでは、介護職は生産性がないのか? だから賃金が安いのかを解説していきます。

介護職は生産性のない仕事なのか?

福祉の仕事は、元々お金儲けビジネスからはじまったわけではないので、根本的にほかの産業とは異なります。例えば、警察の仕事は、お金儲けビジネスではないですね。もし警察が民間企業になってしまったら、安い小さな事件には関与せず、大きな事件しか関与しなくなります。そうなってしまったら世の中大変なことになります。

福祉も医療も、民間で運営をされている機関もありますが、国から支給をしていただいているので、運営が成り立っています。なので一般の産業と比較すると生産性は高くないですが、今後ますます高齢化がすすみ介護職は必要となってきます。

医療・福祉は、なくてはならない産業です。

介護職の賃金が安い原因は?

政府の政策にて人材不足の解消のため介護職の賃上げ、月額9,000円が2022年2月から始まりました。給料は上がるも必ずしも9,000円分、上がるのではなく各事業所によりバラツキがあります。

ここでは、介護職の収入が少ないという理由を解説します。

あまり専門性を重要視されていない

介護職の賃金が安い理由の1つは、資格や専門性があまり重要視されていない点です。

要介護者一人ひとりに合った介護サービスを提供するため、スキルや経験はもちろん必要ですが、施設に対し一定以上の有資格者を満たしておけば、無資格でも業務を行える仕事です。未経験者の方でも、比較的に入りやすい職種です。 ※但し、訪問介護は初任者研修が必須。

専門性を高めスキルアップをしたいのであれば、介護福祉士や介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格修得の選択肢があり。施設や事業所のほうからも求められますし、高い知識や技術が身につき、かつ給料も確実に上がります。

介護報酬に限界がある

もう一つ介護職の賃金が安い理由としては、介護報酬に上限があるということです。

施設や事業所の人件費、運営費などの経費は、国からの支給される介護報酬から支払われるメカニズムとなっています。この介護報酬とは、介護サービスを提供する報酬として支給されます。

介護報酬を上げる方法としては、増税をすることが一般的ですが、そうなると国民が負担することとなり安易に上げないために、介護報酬の上限が設けられています。

ですから、介護職の賃金が上がりにくい現状があるのです。

介護職の生産性を上げる方法

冒頭に、工業やサービス業と比べると医療・福祉は生産性が高くないと述べましたが、実際、生産性を上げなければ利益の確保につながりませんし、職場の人たちにムダな業務をさせたくはありません。どこの施設・事業所も様々な取り組みがなされています。

個人でも、できることはあります、ここではチームや個人でできることを解説します。

清掃・整理・整頓・清潔(4S)

どこの職種も、3s・4s・5s活動を行いますが介護の仕事において、整理・整頓は事故やケガ防止につながり、清掃・清潔は快適に暮らすことができ、かつ感染予防につながります。

特に訪問介護においては、乱雑したご自宅に訪問するときもあります。4sを行う場合、注意してほしいのは利用者さんの意向を無視して勝手に行うと信頼関係が崩れます。まずは、信頼関係を築くことがマストです。そこから、一緒にできるところは一緒に行い、できないところはお手伝いさせて頂くのが介護の仕事です。

情報の共有

1人の要介護者に対し複数の介護職員が関わります。要介護者のその時の状況や場面によって、容態も変わってきます。介護職員も十人十色ですから、受け止め方や気づき方も違います。職員同士の情報の共有により、新たな気付きや改善が生まれてきます。

手順書を作成する

介護の現場において人間相手の仕事ですから、ケースバイケースに対応するときもあり、マニュアルどおりにはいきませんが仕事の流れや、やることは同じです。とくに、新人や未経験者の方は、右も左もわかりませんから予め手順書を作成しておくと、スムーズに教えることができ、かつ仕事も覚えやすくなります。

さらに、トラブルシューティングや訪問介護の場合、訪問した際に利用者さんが倒れていることも想定して、救急車の手配の仕方の手順書を作成しておくと、ヘルパーも安心して仕事ができます。

生産性を上げるというと、作業効率を上げることに重要視されがちですが、安心・安全に仕事ができることは落ち着いて業務を行うことですから、結果的に生産性を上げることにつながります。

スムーズな連携を作り上げる

チームワークは仕事をする上でとても重要です。チームワークはプロのスポーツ選手に聞けというぐらいですから。

チームワークについて転職する際に一番気になるのは、お金よりも人間関係ではないでしょうか。せっかく興味がある介護職に就いても人間関係が殺伐としていたら一気にやる気が失せます。

職場環境については転職する際に、担当者の方と十二分に相談することをおすすめします。

介護職はこれから賃金は上がるのか?

まず、介護士の収入はどれくらいあるのか解説します。

介護士の平均月収・平均年収

正社員(常勤)の平均月収・年収

平均年収約364万円
平均月収約26万円
平均ボーナス約52万円

介護職の平均月収は26万円、平均ボーナス約52万円となり。平均年収は約364万円です。日本の平均年収は約443万円となり比較して決して高い水準ではありません。

政府としても冒頭で解説したとおり将来、介護職の人材不足解消のために、処遇の改善を行われており徐々に給料相場にも成果が表れています。まだ、平均年収には手が届いておりませんが、今後の政府の政策によって、状況が一変する可能性がありますので注目していきたいです。

パート・アルバイトの時給

時給平均
全体の平均1,110円

職種としては、非常勤となります。施設の形態や各事業所によって時給も変わっていきます。

例えば訪問介護事業所(ヘルパー)の場合は、時給というより一軒につき、いくらと給与が加算されていきます。たくさん軒数をこなせば、その分、給与がたくさん支払われます。専門的な話になりますが生活援助より身体介護のほうが給与は良いです。

ただし、訪問介護の仕事は、初任者研修以上の資格が必須となり、ヘルパーと利用者との1対1の支援となるため経験とスキルが求められますが、未経験の方も働いています。

【資格別】介護職の平均月収・平均年収

介護職の資格を修得すると、どれくらい収入が上がるのでしょうか? 資格別で見ていきましょう。

平均月収平均年収
介護福祉士328,720円3,944,640円
実務者研修(旧ホームヘルパー1級)307,330円3,687,960円
初任者研修(旧ホームヘルパー2級)300,510円3,606,120円
無資格271,260円3,255,260円

上位の資格を修得するたびに給与が上がるのは当然のことですが、無資格と介護福祉士の資格を比べた場合、5万円以上の差があります。介護の資格や免許は更新がないので、修得さえしてしまえば一生ものですし、給料は確実に上がりますから資格は取っていたほうが断然によいです。

【施設形態別】介護職の平均年収・平均月収

最後に施設形態別について介護職の平均年収・平均月収を解説をしていきます。

平均月収平均年収
全体の平均316,610円3,799,320円
介護老人福祉施設(特養)345,590円4,147,080円
介護老人保健施設(老健)338,390円4,060,680円
訪問介護事業所(ヘルパー)314,590円3,775,080円
通所介護事業所(デイサービス)278,180円3,338,160円
特定施設入居者生活介護事業所
(有料老人ホーム・ケアハウス・養護老人ホーム)
319,760円3,837,120円
認知症対応型共同生活介護事業所
(グループホーム)
291,460円3,497,520円

施設・事業所の全体の平均年収は約380万円ほど、特養・老健の平均年収は400万円越です。それは何故かというと、特養と老健は公的に運用されており、国からの助成金や税制面への優遇があるため、民間運営の有料老人ホームより費用が安くなります。夜勤もあるので給料は良くなります。デイサービスやグループホームは、昼勤のみの勤務時間になるので、特養や老健と比較すると平均年収は下回ります。

各々の事業所によって給与の差はありますが、一つの目安として転職をする際に参考になると思います。

まとめ

高齢化問題はこの先、世界的な問題になり、日本が先駆けてこの問題に直面しています。国内においても出生率が年々減少傾向があり、高齢化率が上昇しており介護職の人材不足は目に見てわかります。

政府にとっても、介護職の人材不足の解決のために何らかの措置をとるのは必須です。解決策としては、人材の確保・職場環境の改善・賃金引き上げ・介護職の地位向上などが上げられます。

転職をする際、いきなり正社員(常勤)になることはできるのか?と誰でも疑問に思うかもしれませんが、この件に関しては、各事業所によって違います。上述したとおり人材不足ということもあり他の業種と比べて無資格でも正社員になれる事業所もあります。

介護福祉士の免許を修得していれば、当然つぶしがきき、実務者研修の資格を修得していれば、訪問介護のサービス提供責任者になることもできます。

このことに関しては、担当の方に相談したほうが正確な情報が手に入りますし、転職してから資格取得をする選択肢もありますから、いろんな可能性が見えてくるかと思います。

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